変形性股関節症

- 歩くたびに痛みがある
- 湿布や痛み止めでは中々良くならない
- 適切な治療をどこで受ければいいかわからない
- できれば手術はしたくない
- 健康に長生きしたい
変形性股関節症とは?
みんなの体を支えている「股関節」。歩いたり、走ったり、ジャンプしたり、私たちの毎日の動きを可能にしてくれる、とても大切な関節です。この股関節の骨の表面は、「軟骨(なんこつ)」と呼ばれる、ツルツルしていて弾力のある組織で覆われています。この軟骨が、骨と骨が直接ぶつからないようにクッションの役割を果たしてくれているおかげで、私たちはスムーズに体を動かすことができるのです。
変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)とは、さまざまな原因でこの軟骨がすり減ってしまい、骨が変形したり、炎症が起きて痛みが出たりする病気です。原因としては、年齢を重ねることや、体重の増加、激しいスポーツなどで長年股関節に負担がかかることなどが挙げられます。また、日本では生まれつき股関節の骨の形に少し特徴があること(臼蓋形成不全:きゅうがいけいせいふぜん)が原因で、大人になってから発症するケースも少なくありません。
症状は、ゆっくりと進行していくのが特徴です。初めのうちは、立ち上がる時や歩き始めなど、動きの開始時に足の付け根に違和感や軽い痛みを感じる程度かもしれません。しかし、病気が進んでいくと、軟骨のすり減りがひどくなり、クッション機能が失われていきます。すると、歩いている時や階段の上り下りなど、股関節に体重がかかるたびに強い痛みを感じるようになります。さらに進行すると、関節が硬くなって動かせる範囲が狭くなり、「靴下が履きにくい」「足の爪が切りにくい」「正座ができない」など、日常生活の様々な場面で支障をきたすようになります。最終的には、じっとしていても痛みが続くようになったり、夜寝ている時に痛みで目が覚めてしまったりすることもあります。

1. 病態
私たちの股関節は、足の骨である「大腿骨(だいたいこつ)」の先端にある丸いボールのような部分(骨頭:こっとう)が、骨盤の受け皿のような部分(寛骨臼:かんこつきゅう)にすっぽりはまる形をしています。このおかげで、足を自由な方向に動かすことができるのです。そして、骨と骨が直接ゴツゴツとぶつからないように、表面が「関節軟骨」という、ツルツルしたクッションで守られています。しかし、年齢を重ねたり、スポーツなどで長年体重がかかり続けたりすると、この大切な軟骨がだんだんすり減ってしまいます。クッションがなくなると骨同士が直接こすれ合うようになり、その刺激で炎症が起きて痛みが出たり、骨が変形してしまったりするのです。
この病気の進行は、大きく3つのステップで考えることができます。初期の段階では、軟骨が少し傷つき、関節の中で軽い炎症が起きます。この頃は「なんだか足の付け根が痛いな」と感じる程度です。中等度に進行すると、軟骨のすり減りがさらに進み、クッションが薄くなるため、骨と骨のすき間が狭くなってきます。体はなんとか関節を安定させようとして、「骨棘(こつきょく)」と呼ばれるトゲのような骨を新しく作ってしまうこともあります。末期の段階になると、クッションである軟骨がほとんどなくなり、骨同士が直接ぶつかるため、歩けないほどの強い痛みが出ることがあります。また、股関節が固まってしまい、足を動かせる範囲が極端に狭くなってしまうなど、日常生活に大きな影響が出てきます。
変形性股関節症は、その原因によって、大きく次の2つのタイプに分けられます。
一次性変形性股関節症
特別な原因が見当たらず、主に年齢を重ねることや体重の増加などが関係して、自然に軟骨がすり減っていくタイプです。
二次性変形性股関節症
こちらは、はっきりとした原因があって発症するタイプです。例えば、生まれつき股関節の形が少しだけ違っていたり(発育性股関節形成不全)、ケガをした後遺症だったり、関節リウマチといった他の病気が原因で股関節が悪くなる場合などがこれにあたります。
2. 原因
変形性股関節症がどうして起こるのか、その主な原因を見ていきましょう。一つだけでなく、いくつかの原因が重なって発症することもあります。
加齢
関節の軟骨も、長く使っていると少しずつ弾力が失われ、すり減りやすくなります。長い年月をかけて体を支えてきたことで、軟骨が傷つきやすくなるのが、加齢による原因です。車のタイヤが走るほど摩耗していくのに似ていますね。特に、女性は体を守るホルモンのバランスが変わる50歳代頃から、軟骨が弱くなりやすいと言われており、発症する方が増える傾向にあります。
股関節の発育不全
これは、生まれつき骨盤の受け皿(寛骨臼)が浅いなど、股関節の形に少し特徴がある状態を指します。「発育性股関節形成不全(はついくせいこかんせつけいせいふぜん)」とも言います。受け皿が浅いと、体重を支える面積が狭くなってしまいます。狭い範囲で体重を支えることになるため、軟骨の一部分にだけ大きな負担が集中してしまい、通常よりも早くすり減ってしまうのです。日本人、特に女性にはこのタイプが原因で発症する方が多いことが知られています。
肥満
股関節は、体を支える土台となる部分です。そのため、体重が増えれば増えるほど、股関節にかかる負担は大きくなります。例えば、ただ歩くだけでも、股関節には体重の3倍以上の重みがかかると言われています。体重が増えると、その分だけ軟骨を押しつぶす力が強くなり、すり減るスピードを早めてしまう可能性があるのです。健康診断などで使われるBMI(肥満度を表す体格指数)が高い人ほど、リスクが高まると考えられています。
過度な運動・姿勢
サッカーやラグビー、長距離走など、長年にわたって股関節に強い衝撃やひねりが加わるスポーツを続けてきた方は、それだけ軟骨に負担がかかっているため、発症のリスクが高まることがあります。また、スポーツだけでなく、日常生活の何気ない癖も原因になることがあります。例えば、いつも同じ方の足を上にして組む、どちらか片方の足に体重をかけて立つ(片足重心)といった癖は、骨盤のゆがみや股関節への負担の偏りを生み出し、軟骨がすり減るのを助長してしまうことがあります。
3. 治療法
アーク鍼灸整骨院では、これから紹介するいくつかの治療法を、あなたのお体の状態に合わせてオーダーメイドで組み合わせます。そうすることで、つらい痛みを和らげるだけでなく、股関節が本来持っている動きを取り戻し、快適な毎日を送れるようになることを目指していきます。
① 骨格・深層筋調整
股関節の痛みの原因は、実は股関節だけにあるとは限りません。例えば、体の土台である骨盤が傾いていたり、姿勢が悪かったりすると、股関節に余計な負担がかかってしまいます。そこで、まずは骨盤のゆがみを丁寧に整え、体の奥深くで骨格を支えている「深層筋(インナーマッスル)」のバランスを調整します。股関節は腰や膝とチームで動いているため、体全体のつながりを考えながらアプローチすることで、根本的な負担の軽減を目指します。また、筋肉を包む膜のよじれをほぐす「筋膜リリース」という手技も使い、筋肉のつっぱりを取り、関節がスムーズに動くようにしていきます。
② 鍼灸
鍼灸(しんきゅう)治療は、髪の毛ほどの細さの鍼(はり)やお灸(きゅう)で、体の特定のポイントである「ツボ」を優しく刺激する、東洋医学に基づいた伝統的な治療法です。ツボを刺激することで、血の巡りが良くなり、痛みの原因である炎症を鎮めたり、痛みを脳に伝える神経をブロックしたりする効果が期待できます。特に、痛みのせいでカチコチに硬くなってしまった股関節まわりの筋肉を、鍼で直接ゆるめることで、関節の動きをなめらかにする手助けをします。東洋医学の考え方に基づき、骨や関節と関係が深いとされるエネルギーの通り道(経絡)を整え、体が本来持っている回復力を高めていきます。
③ ハイボルテージ治療
「ハイボルテージ」とは、特別な電気を使った治療法です。普通のマッサージなどでは届かない、体の奥深く、痛みの中心部にまで電気刺激を届かせることができます。この治療法は、痛みを脳に伝える神経の働きを一時的にブロックする効果が高く、つらい急な痛みや、炎症をすばやく抑えたい時にとても有効です。「痛くて動かすのもつらい」という状態から、痛みを和らげて少しでも動かせるようになることで、次にご紹介する運動療法など、本格的なリハビリにスムーズに進むためのお手伝いをします。
④ EMS(電気的筋肉刺激)
股関節が痛いと、どうしても動くのがおっくうになり、関節を支える大切な筋肉が弱ってしまいがちです。EMSは、自分で大変な運動をしなくても、電気の力で筋肉を効率よく動かして鍛えることができる機械です。特に、お尻の横側にあって歩く時に体を支える「中殿筋(ちゅうでんきん)」や、太ももの前側の「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」といった、股関節を安定させるための重要な筋肉を狙って鍛えます。筋肉のコルセットを強化することで、股関節がグラグラしなくなり、歩く時などの衝撃を吸収して負担を軽くする効果が期待できます。
⑤ ピラティス(運動療法)
ただ筋肉を鍛えるだけでなく、体全体のつながりを意識しながら、しなやかでバランスの取れた体を目指すのがピラティスです。当院では、専門のインストラクターが、痛みのない範囲で股関節の正しい動きを体に覚えさせるための運動療法として、ピラティスを取り入れています。特に、
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体の中心である骨盤を安定させ、股関節への余計な負担を減らす運動
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硬くなった股関節のまわりを優しく伸ばし、動かせる範囲を広げるストレッチ
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お腹や背中の筋肉(体幹)を強くして、正しい姿勢で動けるようにするトレーニング などを、マンツーマンで丁寧に指導します。あなただけの特別なリハビリメニューで、痛みの再発を防ぎ、もっと自由に動ける体づくりをサポートします。

4. よくある質問
Q1. 変形性股関節症は自然に治りますか?
A. 残念ながら、一度すり減ってしまった軟骨が、元のツルツルの状態に自然に戻ることはありません。しかし、決して諦める必要はありません。周りの筋肉を鍛えたり、体の使い方を改善したり、適切な治療で痛みをコントロールしたりすることで、症状の進行を食い止め、手術をしなくても快適に生活できる可能性は十分にあります。大切なのは、早めに専門家に相談することです。
Q2. 股関節の痛みがある場合、どのような運動が適していますか?
A. 痛みがある時は、ジャンプしたり走ったりするような、股関節に「ドシン!」と衝撃がかかる運動は避けるべきです。おすすめなのは、プールの中で歩く水中ウォーキングや、自転車こぎ、そして専門家の指導のもとで行うストレッチやピラティスなどです。これらの運動は、股関節に大きな負担をかけずに、周りの筋肉を強化し、関節の動きを滑らかにするのに役立ちます。
Q3. どのような場合に手術が必要になりますか?
A. 保存療法(手術以外の治療)を続けても痛みが改善せず、「痛くて夜も眠れない」「短い距離も歩けない」など、日常生活に大きな支障が出ている場合や、レントゲン写真で関節の変形がかなり進んでいる場合には、お医者さんと相談の上で手術(人工股関節置換術など)が選択肢の一つとなります。
参考文献・引用元
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日本整形外科学会「変形性股関節症」
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厚生労働省e-ヘルスネット「変形性関節症」
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日本理学療法士協会「変形性股関節症に対する運動療法の効果」






